グルッペだより 1991年
1991年3月 工房建設地の探索
長野市内へ引越し職業訓練校で木工の勉強をしながら工房を建てる場所探しをしました。 長野へ来て初めての冬。とても雪の多い年でした。 冬の間に北信地方の過疎の村々をあちこち回りました。春になって空き家の斡旋をお願いするお便りを村役場宛てに書きました。
空き家斡旋のお願い‥村役場に宛て 1991.3.3
拝啓
早春の候、貴村の皆様におかれましてはご健勝のこととお喜び申し上げます。さて、初めてお手紙差し上げます。私は北信地域の町村への転入を希望するものです。
将来、木工家としての独立を志し、また真の豊かな生活を農山村にて追求したいと考えています。 知り合いや縁故などがありませんので、
廃屋の紹介や転入地についてのアドバイスを頂けたらと思い お手紙を書きました。別紙に当方の状況を説明させていただきます。
分かりにくい点もあろうかと思いますので機会を見て、訪問させて頂きたいと思っております。 また何か良いお話がありましたら、ご一報下さるようお願い致します。
ご面倒をお掛けしますが、 どうかよろしくお願い致します。
敬具
<別紙:転入地紹介依頼の為の説明資料>
<転入の目的>
1.真の豊かな生活を追及する。
私は大阪で生まれ育ち、東京で企業人として都会生活を享受してきました。 生活が豊かになったといわれる昨今ですが、地球環境問題を始めとし都会においては住宅事情の悪化や
子供の育つ環境の悪化など様々な問題が憂慮されています。「ほんとうに豊かなのか?」と 悩んできましたが、自然環境の豊かなところで、
環境に優しい生活をすることが、ひとつの解決の 方向ではないかと思い、このたび実践しようと決心しました。
問題はそれほど単純ではないと思いますが 今よりも1歩でも2歩でも自分の納得のいくライフスタイルに近づければ良いと考えています。
過疎であるがゆえに自然が豊か(そうであって欲しいと願いますが)であると思います。 こらからは、それが貴重な財産になると思います。
その自然と共存しながら生活していく手段が 一般的なルートとして確立できるなら過疎地の活性化に少しでも寄与できるのでは、などと考えています。
<目標>
1.木工家として独立
2.自給自足的生活(食・住・エネルギー)
3.環境に優しい生活(省エネ・ゴミ・水質の問題)
現在はほとんど非力ですが、模索しながら少しでも実現できれば、そして過疎の問題に微力ながらでも 尽くせればと思っています。
<転入までの予定>
1.希望の地が見つかり次第、工房の建設や住宅の準備を行いたいと思っています。
家族の転入は今年10月以降の予定です。(実際には、工房建設の前、7月に家族で引っ越した)
<転入地の希望条件>
1.借家・借地・売家・売地いずれでも良いが、改装や建設・開墾などがある程度自由に出来るところ。
2.100坪以上、できれば300坪以上の敷地があること。
3.日当たりが良い所。
4.木工の騒音がまわりの迷惑にならないところ。
5.できるだけ小学校が近いところ(徒歩1時間以内)
6.景観の良いところ。
などです。
<家族紹介>
長野市篠ノ井の動物園で撮った家族写真を添付しました。(この年の干支の「羊」がちょうど一緒に写ってくれました。)
P.S. 「成就」というおめでたい名前は、この地区の上に「信濃三十三番札所(最終札所)」 の「高山寺」があり、ここに来ると「満願成就」するということから付けられたそうです。
1991年6月 田舎暮らしの準備開始!まずは自宅改造
小川村の役場の松本さんに同じ地区の空家を紹介してもらい、いよいよ田舎暮らしの始まりです! 7月まで、市内の借家から週末通って家の補修と畑の準備をしました。
これがこれから始まる田舎暮らしの家。前の畑に夏野菜の苗を植えました。 家の東側の空き地にセルフビルドで工房を建てます!
台所は大幅に改造。隣の6畳間との仕切りを取り、合わせてワンルームにしました。 床をはがして大引きを2本追加して補強。
断熱材のスタイルホームを入れて、コンパネを張って、隣村の鬼無里森林組合から購入した ブナの無垢材のフローリングを張って12畳のダイニングキッチンの出来上がり。
キッチンはL字型のシンクだけ購入して、下はこれからお父さんに作ってもらいます。 天井もはがして吹き抜けにしました。天井が高くて気持ちいい!のですが、暖気が上から逃げて‥ このあと冬に断熱材とコンパネを入れました。
1991年7月 ログハウス建設開始!
工房は杉の間伐材の有効利用が目的で、ピースエンドピース工法でセルフビルドで建てることにしました。 まずは腕試しといいますか、これがしたかったのですな。西山森林組合から材料がど~んと到着。 家の庭に高く積まれました。夏休みを利用して友人たちが家族で手伝いに来てくれました。
<友人たちに宛てた助っ人要請のお便り>
この夏、小川村がおもしろい!ログスクール開催! 1991.6.20発行
梅雨お見舞い申し上げます。皆さんお元気でお過ごしですか?夏休みの予定はもう決まりましたか? さて私たちは山村生活の地として小川村という所へ転入することになりました。 小川村?ご存知ない方が多いと思います。長野市から白馬方面へ刳るまで30分位の所にある過疎の村です。 だから星がきれいで、川がきれいで、そして夏は涼しく冬は雪が積もり、温泉もあり、 そして北アルプス(後立山)の眺めがとても美しい素敵な所なんです。 でも観光地ではなく、特に産業もなく町から離れているので過疎なんです。 空き家を借り、今、家の手直しと工房建設の最中です。 工房を、間伐材を使ったログハウス(ピースエンドピース工法)で計画しました。 みんなで一緒にわいわいと建てれば楽しいかなぁと思っています。 この夏、信州方面に遊びに来られる予定の方、ちょっおーと足を伸ばしてお寄りになって下さい。 お待ちしております。
- ⅰログスクール内容(予定)
- ピースエンドピース工法での壁作り(20坪平屋)
- 柱を立てて、その間短い間伐材で埋めていく‥丸太をチェーンソーでカットして、
組み立てていくという作業がメインになります。 - 屋根組み(和小屋)
- 梁を張って束を建てて、組んでいきます。
- 講習料無料(実は日当なし)、宿泊無料、食事付き
- ⅱ.普通に遊びに来られる方へご案内(夏版)
- 温泉‥村内に2ヶ所 近村にちらほら有り。
- 星‥‥村営の天文台が今年の4月にオープンしました。
- 水がおいしい。
- 我が家は標高700mで涼しい。
- 釣りもどっかで、できると思います。
- キャンプ場有り(家の前でもできます。)
- おやき(野菜やきのこが入った饅頭)がおいしい。
- 無農薬野菜が食べられます。
- 虫やとかげが一杯います。
- P.S. 手伝いに来てくださ~い。畑の草取り、屋根のペンキ塗り、土木工事、木工、
立ち木の伐採(大家さんの山)、草木染め(村の施設)などなどもできますよ。 楽しい想い出となりますように!
庭に積まれた材料の前に助っ人軍団集合!
前でジャンプしているのは博文。さすが元ハイジャンパー!
ハウスの骨組みにシートを被せた作業所で太鼓引きにした杉にサネを入れる溝を掘ります。 みんな初めての作業です。防塵マスクをして真剣に‥
まるで合宿のような泊り込みの作業の毎日。夏にはなかなか顔を出さないアルプスが 美しい全容を見せてくれました。展望広場まで車で上がって記念写真をパチリ。
子供たちも鋸を使って、バーベキュー用の薪の準備のお手伝い。
基礎は地元の業者さんに頼みました。木枠を張ってコンクリートを流します。作業の手際の良さに ひたすら感心してしまいました。重い機械を乗せるためのコンクリートも2箇所打ちました。
基礎を作っている側でプール遊びを楽しむ子供たち。
1991年8月~10月 柱を立てて、壁作り。
基礎ができたのでコンクリートの上に土台を廻して、ボルトで基礎に固定します。 その土台に柱を建てていきます。柱の溝と壁材の溝の間にサネを入れて、壁材を上から落として 壁を作っていきます。
<友人たちに宛てた助っ人要請のお便り‥Part2>
この夏、小川村がおもしろい!ログハウスいよいよ壁組み! 1991.9.6発行
拝啓
虫の音が賑やかになり、朝夕はかなり涼しくなりました。皆様にはお元気でお過ごしのことと存じます。 この夏休みは、遠路はるばる小川村までお越しいただき本当にありがとうございました。 お陰さまで小川村に来て良かったなぁと思える夏を過ごす事ができました。 訪れてくれた友人たちは、総勢で大人32名、子供29名延べ120泊でした。
さて、ログハウスの方は、8月の盆過ぎにようやく基礎ができ、8月末に土台を全部廻しました。 柱の加工が7割(15本)、壁が2割(100本)というところで、皆さんに建ててもらうのをただひたすら 雨に濡れながら待っています。
- 10月までに壁組みを終了し
- 11月中に屋根を掛け、冬に備えたいと思っています。
この秋の連休にでもまたお出かけ下さい。江藤氏の記念植キュウリも大きくなり花を付けています。 その他の秋野菜の種も蒔きました。周りのお宅からキノコをいただけないかなぁと期待しています。 炭火で焼きながら秋の夜長をビールで乾杯! ログハウスの他、雪の季節までにやらなあかんこととして
- し尿処理設備(蒸発散漕として花壇を作る)
- 排水溝整備
- 薪ストーブ設置
- 屋根のペンキ塗り、薪割りなどもあります。
ぜひお誘い合わせてお出かけください。お待ちしております。敬具
柱が立ち始めました。
まるで「パルテノン神殿」のよう。
夏休みも終わり友人たちの応援も少なくなりました。1人でコツコツと作業を進める博文。
10月18日。ついにログの壁組み終了。
1991年11月 梁上げ
いよいよ梁上げです。11月の連休、友人たちに再び集まってもらいました。参加者は子供も合わせて 21名。重機は使わず人力で重い梁をどう上げるのか?みんなの智恵と力を合わせました。
<友人たちに宛てた助っ人要請のお便り‥Part3>
SOS! Hurry Up 1991.10.25発行
山の上から木々が色づき始め、冠雪したアルプスの大パノラマ。我が家もそろそろ冬支度の焦り。 皆様、お元気ですか?こちらのログハウスの方は、みんなのお陰で壁組みも終わり、あとは梁さえ 上げればというところ。1本250㎏くらいの松丸太が5本。どう吊り上げるか? また知恵と体力を貸して下さい。
- 10月までに壁組みを終了し
- 11月中に屋根を掛け、冬に備えたいと思っています。
この秋の連休にでもまたお出かけ下さい。江藤氏の記念植キュウリも大きくなり花を付けています。 その他の秋野菜の種も蒔きました。周りのお宅からキノコをいただけないかなぁと期待しています。 炭火で焼きながら秋の夜長をビールで乾杯! ログハウスの他、雪の季節までにやらなあかんこととして
- <梁上げの予定>
- 1回目 11月2日~4日
- 2回目 11月9日・10日
各回、6人くらい集まればうれしく思います。ヘルメットと命綱、あれば持参願います。
その他、薪作り(近くの道路拡張工事で大量に出た。欲しい人にあげます。) 資材整理・穴掘りなど楽しいお仕事一杯!はちきれそうなキャベツ、はよ植えすぎた野沢菜も食べ頃。 (夏のみんなのうんこで育った優れもの)秋を楽しみに来て下さい。連絡待ってます。ヨロシク!
壁の上にケタを回します。都也子も挑戦です。
西山森林組合から赤松の梁が到着。
さあ、いよいよ始まりです。
裏の家の秀一さんはベテランの大工さん。 見るに見かねて手伝いに来てくれました。技専の先輩の斉藤さんも大工さん。 おやつの手作りおはぎを持参して、家族みんなで駆けつけてくれました。 壁の上をスタスタ歩いててきぱきと仕事する姿に感動!です。
梁の端にロープを括り、引っ張ります。
みんなの緊張した顔・かお・カオ‥
下で支える人と、ロープを引っ張る人と呼吸を合わせてがんばりました。
現物に合わせてその場で加工しながら作業は続きます。
子供たちは、焼そばの落ち葉集めで活躍。
まるで保育園のようで楽しかったね。
梁上げ完了!みんなありがとう!
1991年11月~12月 束を立てて屋根を上げる。
ついに「屋根」まできました。本当はもう少し高い屋根にするつもりでしたが、 雪が降る前に屋根だけは上げてしまわないと‥折半のトタン板で片屋根にしました。 ‥さあ、がんばるぞ!
梁に「束」を立てる加工をします。
高所作業なので注意して‥
木槌で束をたたいてはめ込みます。
子供の昼寝時間をねらって都也子も作業を手伝います。
カメラマンは玄文(4才)。弟が起きたら教えてね
やったー!束が立ちました。
やったー!支えが乗りました。もう少しです。
屋根の折半板は、トラックを借りて自分で運びました。とても重くて、 屋根まで引っ張り上げるのが大変でした。1枚1枚2人で掛け声かけて引き上げます。 下から押し上げて、上から引っ張って‥苦労したなぁ。
支えに折半板をボルトで固定します。
4歳の玄文も屋根の上でお手伝い。落ちないでね。
12月9日 雪が降る前に屋根完成!
一部は透明の折半板にしました。
屋根まで完成したログハウスの前で年賀状用記念撮影。博文34才。都也子32才。玄文4才。悠文1才の冬でした。
1991年12月 床張り・窓入れ・扉付け・ログハウス完成!
この年は初雪が遅くて助かりました。 屋根の上がったログハウスの中で、仕上げの作業が進みました。
床に杉板を張っていきます。本ザネ加工はもちろん自分でやりました。
他に、ブナ、ナラ、カバも使い楽しみましたが、床貼りだけで一週間掛かりました。
床ももう少しです。窓は、小川神社の改修で出た木枠の窓をもらうことになりました。 神社のお古がもらえるなんて、ご利益がありそうで、ラッキーです。
窓も扉も屋根の隙間も埋まり、ついにログハウスが完成しました。
窓枠にグルッペのマーク「カタツムリ」をルーターで刻んだプレートを入れて 木工房グルッペの始まりです!